『号外』に驚異せよ――国木田独歩と戦争ジャーナリズム――

『号外』に驚異せよ――国木田独歩と戦争ジャーナリズム――

状態 完成
最終更新日 2013年08月11日
ページ数 PDF:16ページ
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内容紹介

国木田独歩の短編小説『号外』は明治三九(1906)年、『新古文林』の八月号にて発表された。日露戦争後、平和な生活の中に到来した弛緩した感覚を、戦争の「号外」を常に後生大事にポケットに入れている加藤男爵というユニークな登場人物に托して描き出したこのテクストは、未だ研究史上において正統な評価がなされていない。その最大の理由は、国木田独歩という作家と好戦的な加藤とを区別するために、独歩と戦争をデリケートに分割する評価の政治的力学があったからだ。しかし、独歩は日清戦争で従軍記者を経験し、更には日露戦争で『戦時画報』の編集長を務めていた。つまり、独歩は二度の戦争に対してジャーナリズムの立場から深く介入していたのだ。その前提的な文脈を共有したとき、『牛肉と馬鈴薯』で示されていた独歩固有のテーマである「驚異」の重要な展開を見せるテクストとして『号外』を評価することができる。

【目次】
一、『号外』評価の政治的力学
二、「挙国一致」と報道の条件
三、従軍記者/編集長としての独歩
四、『牛肉と馬鈴薯』と驚異の願望
五、驚異としてのテクスト
六、独歩のアキレス

【略年譜】
明治四(1871)年 千葉県銚子にて誕生。
明治二七(1894)年 23歳。九月、国民新聞社に入社。一〇月から日清戦争の従軍記者として千代田艦に乗艦。
明治三四(1901)年 30歳。『牛肉と馬鈴薯』を『小天地』十一月号に発表。
明治三五(1902)年 31歳。矢野龍渓に招かれ近事画報社に入社。日露戦争の戦況をビジュアルに富んで報じる『戦時画報』編集の仕事に力を入れる。
明治三九(1906)年 35歳。八月、近事画報社解散、独自に後を継いで独歩社を立ち上げる。『号外』を『新古林』八月号に発表。
明治四一(1908)年 前年から悪化していた肺結核の末、六月に没する。

目次
一、『号外』評価の政治的力学
二、「挙国一致」と報道の条件
三、従軍記者/編集長としての独歩
四、『牛肉と馬鈴薯』と驚異の願望
五、驚異としてのテクスト
六、独歩のアキレス
奥付
奥付