小林多喜二の手――『不在地主』に於ける握手の代償について――

小林多喜二の手――『不在地主』に於ける握手の代償について――

状態 完成
最終更新日 2012年09月29日
ページ数 PDF:14ページ
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内容紹介

プロレタリア作家小林多喜二のテクストを読んでいると、しばしば印象的な「手」の描写をよく目にする。それは「握手」というマルクス主義的な「連帯」の象徴として用いられることが多いが、しかし、その中でも多喜二が意図したかどうかに関わりなく、そのテクストにはより多様な「手」の様相が書き込まれている。多喜二の長編小説『不在地主』を中心に、そこで登場してくる「手」に焦点を合わせながら、作品世界の深い読解を目指す。

【『不在地主』梗概】
『中央公論』1929(昭和4)年11月号に発表。磯野小作争議という実際の事件をモデルに、農村の搾取構造を描いたプロレタリア小説。農場の主人岸野が不在であるにも関わらず、その代理人に管理される村、S村。そこで貧農生活を送る健は、段々と農村と都会の搾取の構造や労働者の悲惨な現状を学びながら、仲間たちと共に、争議を展開していく。そして、最終的に恋人節のいる村を離れ、労働運動のため、都会へ旅立つことを決意する。『蟹工船』以降の多喜二の自信作。青空文庫で可読。

目次
一、小林多喜二の「握手」
二、収奪される手と握手の要請
三、手の差異化と差別化
四、連帯代償としての手切れ
五、フロンティア・スピリット
結論、反転する敵と味方
奥付
奥付