『或る女』の時間論

『或る女』の時間論

状態 完成
最終更新日 2012年09月29日
ページ数 PDF:24ページ
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内容紹介

有島武郎の『或る女』(大正八年六月)を、時間という鍵語の下で、テクスト細部に拘りながら読解した。

【『或る女』梗概】物語の時代設定は明治三十四年の九月初旬から翌年の夏にかけて。高慢で美貌なヒロイン早月葉子は母親佐の反対を押しきって当時文名のあがった新聞記者木部木部弧筇と結婚し、定子という子さえ産むが、性格の不一致から結局は離婚してしまう。親佐はその後死んでしまうが、その遺言に等しいものとしてアメリカにいる木村貞一という男との結婚を葉子は親戚一同から強要される。葉子は二人の妹、愛子と貞世との別れに後ろ髪引かれながら、日本を旅立つ。しかし、その船の中で運命的な出会いに葉子は出くわす。つまり、絵島丸の事務長、倉地三吉との出会いである。二人は互いに強く惹かれ合いながら熱愛の関係に溺れ、アメリカに到着し、木村と面会しても、葉子は結果的にアメリカの地を踏まずに日本へ帰ってきてしまう。その後、倉地と共に葉子は日本で生活をするが、この出来事がスキャンダルとして新聞に報道され、倉地は会社から馘首されて、金を得るためにスパイ業に手を染めることとなった。木部との再会に後悔の念を喚起させながら、並行的に葉子は健康を害し、同時にヒステリー症が強くなっていき、そして、病状はいよいよ悪化して入院することになる。だが手術の甲斐もなく、幸福を求めて苦しみつづけた一人の女性は、ついに苦悩のうちに死んでいく。

目次
序論 『ある女のグリンプス』と『或る女』
序論、『ある女のグリンプス』と『或る女』
一、読む女
二、書かない女
三、謎と過去
四、過誤と越境
奥付