| 状態 | 完成 |
|---|---|
| 最終更新日 | 2016年02月29日 |
| ページ数 | PDF:22ページ |
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影屋を訪ねる様々なものたちの話です。
| 路地裏の喫茶店には影屋がある。 |
| 穏やかなマスターに迎えられ |
| ブラックコーヒーと角砂糖をみっつ注文すると |
| 一服し、新聞も読み終えたところで |
| マスターは、「あちらです」と奥の扉を指す。 |
| 鍵穴に角砂糖をひとつ、ふたつ、みっつ入れると、扉のノブが回る。 |
| 部屋のすみには小さな影屋。 |
| 今日は先客がふたり。 |
| 翼がもげたフクロウの影 |
| 化けすぎて形を忘れたテンの影 |
| 影屋は繕ったり洗ったりして元通りにする。 |
| 「さて、お次の方はどんなご用で?」 |
| 僕は、懐から丁寧にカメを取り出した。カメには、影がないんだ。 |
| 影屋は自分より大きなカメを持ち上げ、ぐるぐると回し、あちこち見た。 |
| 「これはいけない」影屋は言った。「この子は空想の中のカメなのさ。」 |
| カメははらはら泣いて泣いて、小さくなっていった。 |
| 影屋は少し黙った後に、仕方がないとさらりと影を編み上げた。 |
| 「ありがとう」「ずっとは暮らせないよ、またおいで」 |
| それからなぜか、角砂糖の扉は開かなくなった |
| カメの影はこの角砂糖を食べると、ひときわくっきりするんだ。 |
| 奥付 |
| 奥付 |