いま、日本人は考えることを止めている。あるいは考えることを放棄している。特に本質的な問題について殆ど考えていない。
それは使われていることばに表れている。
いま、日本人はことばを学ばず、いじりすぎる。奥の深い日本語の語彙や論理が身についていない。だから考えることができなくなっている。日本語が亡びつつある。母国語を失うことは足場がなくなり、日本の文化にとって悲惨である。緊急事態といっていい。
人間存在の本質にかかわる問題は、伝統的な日本語でなければ考えることができない。微妙な思考をするには母国語しか使えない。
伝統的な日本語とは、時代を越えて使い続けられてきて、多くの人々にとって意味や感性が共有されていることばである。
ところが、意味の定まった伝統的な日本語は、まだ誰も整理し体系化していない。未開の分野である。この書はその手がかりをつかむひとつの試みである。
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