「侍という身分にも、積もる悩みは数々あるものじゃな・・・」風庵は、そう呟くと、急須を傾けた。
「さてと、今夜は、信州、佐久の宿で聞いた、いささか恐ろしい話をしようか。身の毛もよだつとは、このことじゃろうかな」
老人は、ほうじ茶をずずっと啜った。千曲川のほとり、若くして父の跡目を継がねばならぬ少年、小太郎の悩みは深かった。優しさ故か、気の小ささか・・・同輩からは「ケラのフグリ殿」とあざけられていた。その少年が、後見役の伯父に勧められ、鬼神の宮へ妖怪退治に向かうことになる・・・
| * 鬼神の宮に、妖しの糸の舞い狂う |
| * 花を摘む小太郎 |
| * 「ケラのフグリ殿」 |
| * 妖怪のうわさ |
| * 決心 |
| * 伯父御の餞別 |
| * 出立 |
| * 古宮は苔むして |
| * 妖しの女は、子連れの・・・ |
| * 小太郎の太刀風 |
| * 切ったは、五輪の石塔か |
| * 闘いの終焉 |