幼稚園のころ、クラスメートがタガメを捕まえてもってきた。タガメは、なかなかお目にかかれない水生昆虫の王者だ。教教室おいてある水槽のなかへ放たれたタガメは、おたまじゃくしをとらえて体液を吸った。その圧倒的な迫力に、それまでもてはやされていた僕のミズカマキリがすっかり色褪せてしまう。なんとなく面白くない僕。ある日、水槽から逃げだしたタガメを見つけた僕に浮かんだ考えとは……。誰にもある幼い日に抱いた嫉妬と葛藤が、甘酸っぱい感傷とともに蘇る掌編です。