風庵老人の暮らしは春風駘蕩。 気が向けば、春風に舞う蝶の如く、あるいは秋の涼風に浮かぶワタゲの如く、ふらりと旅にでる。夏には団扇片手に縁側に座り、冬はイロリの灰を掻きながら、憑かれたように妖しの旅の噺を語る。
今回は、秩父での噺じゃ。旅の僧が秩父の里にやってきた。庄屋の若主人が門前を清めてる。
僧は、ついと歩み寄った。そして声を潜めて言った。「貴殿を看るに、物の怪付きて、祟りの影が気になり申す・・・いや、御身の命終わらんこと、ほど近しと覚えまするぞ」
ぎくりとした半之丞は、ホウキを手代に渡すと、旅の僧の手を取った。
彼には、感じるところあったのだ。
半之丞は不審そうに戸惑う手代にあとを任せると、僧を誘った・・・
怨霊悶え、妙法蓮華経を焼く(秩父の巻) |
* 庄屋の不幸 |
* 旅の老僧 |
* 墓の前に立つ |
* タツの亡霊 |