中学校二年生のみさきは現在休学している。特に勉強をすることもなく、先日放送を開始されたアニメ『逃亡王女マリー』だけを楽しみにして、日々怠惰な生活を送っている。
　幼なじみの和豊（かずとよ）はみさきに好意を寄せていて、陰ながら学校に戻ってくることを祈っている。唯一みさきが外部と連絡を取り合っている間柄だが、みさきは彼の思いに応えられないでいた。
　母は離婚を機に明るくはっきりとした性格は、正反対に暗く表情の変化の乏しいものになってしまっていた。酒に酔って朝帰りもする母にみさきはぼんやりとした戸惑いを感じつつ、自然と顔色をうかがう生活を送っている。
　ある日、『逃亡王女マリー』のグッズが遠方の地で発売されることを知るがそれは親子同伴でなければ買えない代物だった。
　みさきは母親を何とか説得して新幹線に乗り目的地へ向かう道中で、思わぬ母の一言を偶然耳にする。頭が混乱するなか性格が変化した母の真実を知ることにもなる。彼女は少しずつ、知らずに避けていたことに目を向けようしていた。