――水は冷たいのに、海の中はどこか温かくて。
ゆっくり沈んでいく身体は大きな手になった海の水に包まれて。
赤ん坊の頃に母親に抱きかかえられたときのようで。
遠ざかっていく水面が真夏の空のように青くて。
心を海の外に置いてきてしまったかのように。
このまま息が止まってしまうことに何の不安も感じない。
大人たちが慌てて海に飛び込み必死に僕を捜すのを。
物言わぬ珊瑚の欠片になってしまったように。
沈みながら、ただぼうっと見つめていた――。
※本作は「一太郎2013 玄×ブクログのパブー電子出版デビュー応援!キャンペーン」の「鮮烈!デビューキャンペーン」に当選し、イラストレーターでありマンガ家でもいらっしゃる萱島雄太様に表紙のイラストを描いて頂きました。萱島雄太様、ならびに本件をご担当くださったパブーのO様に心から感謝申し上げます。
読者の皆様におかれては、萱島様のイラストから膨らむイメージとともに、本編をお楽しみ頂けたら幸いです。
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