大切な家族や友人を喪う日は、誰でも何時かは必ずやって来る。
それを宿命と言うのだろう。
だがその辛い宿命を背負って最後まで生き抜いたならば、幸せな来世に生まれ変わる事が出来て再び愛する人と出会えるのか。 誰もがそう信じたいだろうが、確信は誰にも無いのだ。
あるのは大切な人を亡くした瞬間から、孤独と苦しみと悲しみの日々が、猛烈な勢いで始まり、それが一生涯続く恐怖だ。
事故、病気、犯罪、災害など、死には様々な形があるが、後に残された者の悲しみや辛さは、死別と言う意味では皆共通している。
津波で家族全員を一瞬にして亡くしてしまった人々も、また時間を掛けて手足をもぎ取られるに、一人また一人と家族を喪って来た人も、死別に変わりは無い。
喪った大切な人を思えば思う程、見る事も触ることも出来ない苛立ちからは、死ぬまで逃れられ
ないのだ。
愛と言う絆で繋がっていると感じているつもりでも、信じたいと願うがために陥る己の錯覚かも知れない。
現世に生きる我々には、確実な黄泉の証拠など何も無いのだから。
立ちはだかる現世の時間と言う障壁が邪魔をしている以上、己に与えられた時間が終わるその日まで、真実を知る事は出来無い。
しかし加島亮と言う男性は、青年時代に見た夢の全てを、再度現実の世界でも体験してしまう不思議な人生を生きたのである。
そのデジャブな体験は、我々が存在する次元とは、全く違う別の次元が存在しなければ説明出来ないのだが、これはそんな彼のあり得ない人生を記したノンフェクション小説である。
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