日本には 6,852 の島がある。しかし、その中で人間が居住しているのは400 ほどでしかない。残りの 6,400 以上の島々に関しては、ほとんど注意が払われることはなく、見過ごされていることもすくなくない。
ベールに包まれた数多の島々のうち、首都東京から一足の距離にありながら、まったくその存在が知られていない三つの島がある。
かつて「東の天橋立」とよばれた第一海堡、その沖合にある第二海堡、そして横須賀沖に浮かぶ第三海堡(2007年撤去)である。この三つの島は海に浮かぶ軍事要塞で、明治時代に建設されたものだが、太平洋戦争の終結とともに、顧みられることなく朽ち果てようとしている。
本書は廃墟としての側面を視野に入れながら、近代日本の土木建築技術/要塞建築技術を今に伝える資料として、また大きな爪痕を残した関東大震災の記念碑として、そして戦争の記憶を風化させないための装置として、第一海堡を紹介するものである。
戦時中、この島の砲台守として暮らした家族の証言や、東京湾要塞司令部の職員一覧表、島の様子を写した写真など貴重な資料をコンパクトな分量でまとめてみた。
(雑誌「島へ」2011年5月号(海風舎)掲載の「島の秘密『第一海堡』(千葉県)」 に未公開資料を加えたもの)
執筆=檀原照和
口絵1 |
口絵2 |
本文1 |
センターカラー1 |