子羊の婚礼
矢上唯一 原作
(校正タイプ稿・1988年8月7日 久米弘)
六畳ほどの狭い部屋に、平田と吉永の二人は、炬燵を隔てて向い会っていた。二人とも三十代半ばと見えた。正確な年齢はお互いに知らない。二人に共通しているものは歳格好ぐらいなもので、その他は全く正反対であった。
、 平田は筋骨たくましく堂々としている。一方の吉永は、均整に欠けた見るからに脆弱な姿勢であった。当然、平田は吉永を睥睨するように睨みつけ、吉永は平田の風圧に耐えかねる面持ちであった。畏まっていた。
二人は今、厳しい対決の最中である。
吉永が言う。
「平田、さん。あなたは、神の、言葉を伝える役目を、持つ牧師でありながら、その、大事な、神の言葉を知らない」
(再稿・1988年8月7日) (1) |
(再稿・1988年8月7日) (2) |
(再稿・1988年8月7日) (3) |
(再稿・1988年8月7日) (4) |
(再稿・1988年8月7日) (5) 第1部後篇 |
(再稿・1988年8月7日) (6) |
(再稿・1988年8月7日) (7) |
(再稿・1988年8月7日) (8) 第1部 最終回 |