西暦1984年。
あるいは昭和五十九年。
右肩上がりの経済成長と、バブル経済のまっただなかの狂乱の時代。東京都弐十三区のそれぞれが巨大な壁によって区切られ、外部とは隔絶された管理都市＝東京都に住む磯辺タカヲは、ゴミ捨て場でまだ使える電気製品を拾っては修理するという「変わり者」の中学生。
　ある日、そのゴミ捨て場で、偶然、昔のゲームソフトを発見してしまう。
　『人間牧場物語』という管理社会に警鐘を鳴らすゲーム。その生産年月日を見、タカヲは驚く。西暦2010年。つまり、未来に作られていたのである。
　真実という闇に一歩足を踏み入れたタカヲ、そのタカヲに友愛省の警吏の影が忍び寄る。
　ジョージオーウェルの「一旧八四年」を元に、管理統制社会に生きる少年＝タカヲを描いたSF小説の初編。