■ナンバって何?
みなさんはナンバをご存知ですか?
近ごろは陸上の末次慎吾選手の「ナンバ走り」が有名になったり、またマスコミでもとり上げられたりして、言葉だけは知っているという方も増えました。
以前から「知っている」という人は、たいてい「歩くときに右手と右足がいっしょに出る動き」と答えます。
もう少し知識のある方になると、「昔の日本人はみんなナンバで歩いてたらしいヨ」という方もいます。両方当たっています。
広辞苑によれば、「歌舞伎や舞踏の演技で、右手が出るとき、右足を出すような、ふつうとは逆の手足の動作をいう」とあります。“ふつう”というのは、日ごろ私たちが無意識にしている動きーー歩いているときなら右手が前に出るときは反対の左足が前に出る動きですから、ナンバは確かにその反対「右手と右足、左手と左足、つまり体の同じ側の手足が同時に出る動き」です。
日本人の場合、たいていは幼稚園のお遊戯や運動会の行進などで“ちゃんとした歩き方”を“指導”されるので、「ほら、幼稚園のとき、行進するとき右手と右足がいっしょに出るヤツ、いたろう? あれがナンバだよ」ということになります。
もっともこのイメージにはかなりの誤解があって、まずナンバは手はそんなに前後に振りません。末次選手も手を足と同じ側に振って走ったわけではありませんし、江戸時代の庶民も手はほとんど振らなかったといわれます。いまの私たちがナンバで歩いても、注意して見ない限りは違いにはそう気づかないでしょう。