その道の先にあるもの


著: fuwayukky

その道の先にあるもの

著:fuwayukky
状態 完成
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内容紹介

 デリーからロンドンまで、乗り合いバスで行くことが出来るか。
私が『深夜特急』を知ったのは小学生の時だった。果てしなく広い大地が目の前に広がっている様で、夢中でページを繰ったのを覚えている。
 主人公は26歳で旅に出る。ほんの数ヶ月で終わらせるはずだったロンドンまでの旅は、様々な人に出会い、様々な光景を見、感じるたびに終わりが延びていく。
 まだ海外に行ったことがなく、1ドル100円前後の時代に生まれた私には、1970年代の情勢も分からなければ、主人公の全財産の1900ドルが当時どれほどの価だったのかも分からなかったが、それでもこの旅には引き込まれていく魅力があった。
 そして一番大切なものを小学生の私に与えてくれた。それはもっといろいろなことを知りたいという知識欲だ。自分が住んでいる日本の、狭い範囲しか知らないのはつまらなかった。長く続く道の先に何があるのか、それを知りたいと思った。
 それから私は英語を習い始めた。当時学校での英語教育は中学生からだったが、私は一日でも早く学び、習得して外国へ行きたかった。
 そして学生時代はたくさんの本を読んだ。知らない世界のことをもっと知りたい、広い世界を見たい。私を突き動かしているのはその熱意だった。
 そうして18歳になって、アルバイトで貯めたお金で初めて海外へ出ることが出来た。『深夜特急』の主人公のように、バックパックを担ぐ一人旅ではなくとも、初めての経験に私はすっかり酔ってしまった。
 海外でも出来る仕事をと考え、大学卒業後は日本語教師の道を選んだ。短い休みを利用してのあわただしい旅行ばかりだが、それでも何かを感じ、学ぶことは出来る。旅をせずとも様々な国の人と会話できる仕事も得た。
 これからも私の旅は続いていく。あの日読んだ一冊に、今もまだ魅了されているのだから。