人間というものは、とかく眼前の事象にとらわれすぎて、遠い将来のことまでは、なかなか思いいたらないものであります。また、同様に、これまで馴れてきた生活環境を脱して、新しい世界に飛びこむ勇気も、なかなかつかめないものであります。このことは、海外移住について、もっとも端的にいえることと思います。
現在、南米で活躍中の移住者のかたがたは、この人間の通生を脱却して、敢然として未知の世界にいどみ、自分の力で自分の運命を開拓された真の勇者であると思います。・・・
昨今、国内における労働力不足を理由に、海外移住に対して消極的な見かたをする向きもありますが、移住事業は一国の景気、不景気にかかわらず、国際的な視野に立って、国家百年の大計の下に推進されなければならないことを、本書によって汲みとっていただけるものと確信いたします。

『南米のいぶき』ー広島県人をたずねてー
より引用