ソウル発修復事情 スルメキリスト

ソウル発修復事情 スルメキリスト

販売価格:330円 (税込)
状態 完成
最終更新日 2012年02月14日
ページ数 PDF:158ページ
内容紹介

 舞台は、1980年代初めから2005年頃までの大韓民国、ソウルと地方都市チョンジュ。若手の彫刻修復家パク・ユンブは、ある大学で新設される文化財学科の設立準備会議で、著名な絵画修復家ホン・グァンオンと出会う。ホンはフランス留学後、絵画修復家の先駆けとして独立自営をし、堪能な語学力で技法書の翻訳や、自伝を出版し若者の人気を博していた。
 パクは上司となるホンに崇敬の念をもって接するが、ホンはどんな場合も自分の名声、自慢話と家族の利益にしか興味を示さず、誇大妄想狂的な発想と行動が、学内に様々な波紋を引き起こし、パクは常にその矢面に立たされる。
 ホンは大学近隣に、世界に類のない巨大な絵画修復アトリエの建設を計画、千坪もある土地に工事が始まるが、借地の代金や工事資金の回転に失敗し、工事は中止となる。大学理事長から引導を渡され、ホンは多額の負債を抱え大学教授の職を辞する。
 社会の景気も悪化、以前ほど絵画が商品として動かなくなり修復の仕事も減り、ホンは片っ端から知人に借金を申込み、同業者の間でも話題になっていた。
 様々な軋轢ですっかり折り合いの悪くなったパクの家にも、ホンから借金を申し込む電話がかかってきた。五百万ウォンという、かなりの大金をパクは二つ返事で貸し与えたが、ひと月も立たぬうちに、弁護士からホンが三十億ウォンの負債を抱え、破産手続きを始めた、との通知を受ける。パクは、貸した金が戻らないことに腹は立たず、債権者有志が起こした裁判にも興味がなかった。
 彼ら二人の共通の舞台でもあった「旧朝鮮総督府」は解体され、跡地に復元整備されつつある李朝の宮殿の前で、パクはホン・グァンオンという人間そのものを分析し、何故、彼が自らの栄光を自分自身で汚すような行動をとったのか、彼の生い立ちや著作から、彼の過去をさかのぼり、また、関係の冷えきっていた彼になぜ金を貸し与える気になったのか、そのことを考え続ける。

目次
プロローグ
作者パク・ユンブの思い
第一章 パク・ユンブと「旧朝鮮総督府庁舎」
キョンボッグン(景福宮) 
民俗博物館にて ペク・ジュオン教授
「旧朝鮮総督府庁舎」 中央博物館カン・チャバン美術部長
パク・ユンブの修復修業
英国留学
第二章 絵画修復家ホン・グァンオンとの出会い
ホン・グァンオン大先生
ホン・グァンオンの青春
第三章 近現代美術館
ホンの上司ソク・イルブ
フランスで得た ホン・グァンオンの天職
第四章 失意のホン・グァンオン
修復家? 美術史家?
ライバル カン・ジョンモク
第五章 独立を目指して
画商ヤン・ヨンフム
インサドンから自前のアトリエに
第六章 成功者 絵画修復家ホン・グァンオン
美術館退職
成功者ホン・グァンオンの仕事
第七章 ホンの行き詰まり
手伝い人ジョン・ソンポク
ホンの再留学
第八章 大学教授ホン・グァンオン
ホリョ・デハッキョ(虎禮大学校)文化財学科
三男ジョンオムの入試
第九章 ホン・グァンオンの思考回路
大学新生活の始まり
不毛な会議 将軍閣下シン・リホ教授
第十章 推薦試験
娘スンオクの入試 「パルパンソンオ」ソン・デジョン助教授
ホンの見識 のしイカになったルオーの絵
第十一章 トッケビにされたパク・ユンブ
トッケビ? ケンチァナヨ
ホン家の大学貢献
第十二章 文化財保存修復学会 大会開催
学会運営委員会
ジョン・カジョン助手の学会準備
学会閉会 立ちつくす「パルパンソンオ」
第十三章 ホン先生の大計画
大先生が喰う夢
ホン絵画修復研究所の建設 「旧朝鮮総督府庁舎」の解体
第十四章 スルメキリスト
大学院創設
ホン教授の解任
文化財研究所カン・デサム修復室長の怒り
第十五章 自己破産
私パク・ユンブへの借金の申し込み
幻影とのシルム(相撲)
第十六章 ソウル 歴史の修復
再び キョンボッグン(景福宮)にて
エピローグ
電話
奥付
奥付