舞台は、1980年代初めから2005年頃までの大韓民国、ソウルと地方都市チョンジュ。若手の彫刻修復家パク・ユンブは、ある大学で新設される文化財学科の設立準備会議で、著名な絵画修復家ホン・グァンオンと出会う。ホンはフランス留学後、絵画修復家の先駆けとして独立自営をし、堪能な語学力で技法書の翻訳や、自伝を出版し若者の人気を博していた。
パクは上司となるホンに崇敬の念をもって接するが、ホンはどんな場合も自分の名声、自慢話と家族の利益にしか興味を示さず、誇大妄想狂的な発想と行動が、学内に様々な波紋を引き起こし、パクは常にその矢面に立たされる。
ホンは大学近隣に、世界に類のない巨大な絵画修復アトリエの建設を計画、千坪もある土地に工事が始まるが、借地の代金や工事資金の回転に失敗し、工事は中止となる。大学理事長から引導を渡され、ホンは多額の負債を抱え大学教授の職を辞する。
社会の景気も悪化、以前ほど絵画が商品として動かなくなり修復の仕事も減り、ホンは片っ端から知人に借金を申込み、同業者の間でも話題になっていた。
様々な軋轢ですっかり折り合いの悪くなったパクの家にも、ホンから借金を申し込む電話がかかってきた。五百万ウォンという、かなりの大金をパクは二つ返事で貸し与えたが、ひと月も立たぬうちに、弁護士からホンが三十億ウォンの負債を抱え、破産手続きを始めた、との通知を受ける。パクは、貸した金が戻らないことに腹は立たず、債権者有志が起こした裁判にも興味がなかった。
彼ら二人の共通の舞台でもあった「旧朝鮮総督府」は解体され、跡地に復元整備されつつある李朝の宮殿の前で、パクはホン・グァンオンという人間そのものを分析し、何故、彼が自らの栄光を自分自身で汚すような行動をとったのか、彼の生い立ちや著作から、彼の過去をさかのぼり、また、関係の冷えきっていた彼になぜ金を貸し与える気になったのか、そのことを考え続ける。
プロローグ |
作者パク・ユンブの思い |
第一章 パク・ユンブと「旧朝鮮総督府庁舎」 |
キョンボッグン(景福宮) |
民俗博物館にて ペク・ジュオン教授 |
「旧朝鮮総督府庁舎」 中央博物館カン・チャバン美術部長 |
パク・ユンブの修復修業 |
英国留学 |
第二章 絵画修復家ホン・グァンオンとの出会い |
ホン・グァンオン大先生 |
ホン・グァンオンの青春 |
第三章 近現代美術館 |
ホンの上司ソク・イルブ |
フランスで得た ホン・グァンオンの天職 |
第四章 失意のホン・グァンオン |
修復家? 美術史家? |
ライバル カン・ジョンモク |
第五章 独立を目指して |
画商ヤン・ヨンフム |
インサドンから自前のアトリエに |
第六章 成功者 絵画修復家ホン・グァンオン |
美術館退職 |
成功者ホン・グァンオンの仕事 |
第七章 ホンの行き詰まり |
手伝い人ジョン・ソンポク |
ホンの再留学 |
第八章 大学教授ホン・グァンオン |
ホリョ・デハッキョ(虎禮大学校)文化財学科 |
三男ジョンオムの入試 |
第九章 ホン・グァンオンの思考回路 |
大学新生活の始まり |
不毛な会議 将軍閣下シン・リホ教授 |
第十章 推薦試験 |
娘スンオクの入試 「パルパンソンオ」ソン・デジョン助教授 |
ホンの見識 のしイカになったルオーの絵 |
第十一章 トッケビにされたパク・ユンブ |
トッケビ? ケンチァナヨ |
ホン家の大学貢献 |
第十二章 文化財保存修復学会 大会開催 |
学会運営委員会 |
ジョン・カジョン助手の学会準備 |
学会閉会 立ちつくす「パルパンソンオ」 |
第十三章 ホン先生の大計画 |
大先生が喰う夢 |
ホン絵画修復研究所の建設 「旧朝鮮総督府庁舎」の解体 |
第十四章 スルメキリスト |
大学院創設 |
ホン教授の解任 |
文化財研究所カン・デサム修復室長の怒り |
第十五章 自己破産 |
私パク・ユンブへの借金の申し込み |
幻影とのシルム(相撲) |
第十六章 ソウル 歴史の修復 |
再び キョンボッグン(景福宮)にて |
エピローグ |
電話 |
奥付 |
奥付 |