閲覧5000突破感謝祭。ほとんど全部、試し読みできますのでぜひ立ち読みを!灯と書いてともしびくん。灯くんはつつましい希望。砂の国の 虚無のひとたちに 希望をとどけたくて灯くんは大冒険。あなたの心にも 灯とどきますように。
試し読みで興味もたれたら 恐縮ですが めんどうでも240円で買って最後まで読んでくだされ。 ロケの費用が・・・。
| 灯くんは 砂の国に迷いこんでしまいました。 |
| むかし ほろびたものの骨が 荒地にころがる国です。 |
| 影が 見ています。 |
| 黒い影です。 |
| 灯くんが 歩くと |
| 影は・・・ |
| ひょこひょこ歩きだして |
| 灯くんのあとを ついてきました。 |
| 影は 砂のひとでした。ずっとついてくるので |
| 灯くんが 立ちどまると |
| 砂のひとは 追いこした とたん・・・ |
| 灯くんに 崩れ落ちるように |
| 倒れ込んできました。 |
| 突然で びっくりです。 |
| うああ ばらばらだあ。 |
| 灯くん助けおこそうとしますが すごく重いのです。 |
| おまけに 川までふたりを のみこもうとします。 |
| 崩れる崩れる |
| この川は 怒っているのかな? |
| ぅおぅ |
| 早く 逃げないと まきこまれちゃう。 |
| ひっしひっし! |
| のみこまないでよ、ちょっと待ってよ |
| 流さないでよ まだやることがあるから |
| ずずっずずっ |
| 川からはなれて 足をつけてあげて ようやく 落ち着いてきました。 |
| あとは この手をつけて、と。あ!これ違ってる。川に流されたかな?大変だ! |
| すこし怖いけど のみこむ川にもどります。 |
| ちょっとのあいだに 川は荒地を 深くえぐっていました。 |
| ゆっくりゆっくり はるか下の川まで 崖をおりて |
| やっとおりたけど 砂の左手は なかなか見つかりません。 |
| 潜って さがそう |
| ぶくぶく ぶく おさかなくん砂の左手 落ちてこないかい? |
| ぷくぷく 砂の手 流れてこなかった? |
| ぷくぷく 砂の手 まちがって のみこんでない? |
| ぅあは くすぐったいと思ったら うみうしくん なにかおしえてくれるのかい? |
| きれいだね からだに花をつけてるんだね。 |
| 砂の手を探すのは 大変だけど 灯くん泳ぐのは大好き。楽しんでます。 |
| わぁ |
| もがいてもがいて |
| あぁすっきり |
| きらきら こぽこぽ |
| きらきら ぷかぷか |
| ぷはあ |
| ・・・ここは? |
| 苦しかったけど 今ので底に沈んでる左手見つけたよ。 |
| はい、左手を探してきたよ。砂のひとは黙ったままです。 |
| しゃりしゃり これでついたよ。砂のひとは 黙ったままです。 |
| どうして黙ってるの?どうして歩かないの? |
| 変なのです。灯くんの声は聞こえてるはずなのに 砂のひとは動こうとしません。 |
| 怒ってるの?よけいなことをしたのかな? |
| 灯くんが 行ってしまうと 砂のひとは ひょろひょろしゃりしゃり歩きだしました。 |
| たすけてもらった お礼も言わず 底なしの黒い穴に やってきて・・・ |
| あ! |
| なんで?・・せっかく・・ |
| そんなことは知らずに 灯くん歩いてます。 |
| どうやら この砂の国のひとびとは なにかに のみこまれるまで ただ立ちつくすか なにかのはずみで ぱらぱらの砂に もどってしまうようなのです。 |
| 砂にもどってそれきりのひとと なんども砂びとになっては ただ立ちつくすものと |
| 砂の国のひとびとが ぽつりぽつり虚空を見つめて 立っています。 |
| あれ?この砂のひとは・・・ だれかに にているよ。 わかる? |
| なんだか 知らないひととは 思えません。だれににてるかな? |
| 話しかけてみても やっぱり黙ったまま 動こうともしないので さびしいです。 |
| 灯くんが 去ったとたんに 砂びとは ぱたりと倒れ |
| あっというまに ただのぱらぱらの砂に なってしまいました。 |
| 灯くんは のみこむ川の上流に来たようです。 |
| あ またあのばらばらになる 砂のひとが |
| こっちの砂ひとは 起こしても 心がないかんじ 心の奥まで砂のひとです。 |
| ところが この二回目の砂ひとからは やっぱり たすけてと心のこえが きこえるのです。だから灯くん しらんぷりなんかできないのです。 |
| でも せっかく体を もとどおりにして 動けるようにしてあげても |
| 灯くんに たすけをもとめておいて なのに動けるようになると しゃかしゃか歩いて・・・ |
| また 自分で 穴に飛び込んで この国のどこかに 墜落してくるのです。 |
| 困ってしまいますが 灯くんくよくよしません。こんなときは わざと のんびりです。そうすれば なにかいい考えも うかぶかも。 |
| 月がでてきて 灯くんにいいこと教えてくれました。 |
| ふあ もう眠くなっちゃった。また 明日にしよう。 |
| 砂のベッドでおめざめ。なかなか寝心地よかったね。 |
| 朝はやくから ほろびたものを見ました。これはいい前兆?そう、灯くんにはなんでも吉兆なんです。ほろびてもきれいに色がのこってるし。 |
| ありゃこれが吉兆の?出会い?悪役いぢわるあなじゃこに こんなところで会うなんて。泥の国にいたはずなのに・・・まさかまた・・・ |
| いぢわるあなじゃこは 砂のひとになっていました。この国ではめずらしく 自分で動ける砂びとなのに・・・それなのに・・・ |
| することといえば こんなふうに だれかれなしに 毒をはかないではいられないのです。灯くんを行かせまいと邪魔をします。 |
| からだをねじって のがれるだけ。 灯くんは けんかがきらいです。 |
| いぢわるあなじゃこ動かなくなって なんだか自分が悲しくなってるような。 |
| あっというまに砂に。いぢわるあなじゃこ こまったやつなんだけど 灯くんなにもしてあげられず さびしいかんじがします。 |
| え 灯くん いきなり |
| えぇー そんなとこ |
| うわぁ 灯くん急にどこ登ってるの? |
| 灯くん 今はなにをするべきなのか はっきりわかっています。 |
| もっと早くここに登れば いぢわるあなじゃこも たすけてあげられたかな つい思ってしまいますが・・・ |
| だけどここであかりがとれるのは 赤い月のでるほんの一瞬しかないので どのみちいぢわるあなじゃこには 間に合わなかったんですよ。 |
| このあたりで 砂岩塔のあかりがとれるはず。灯くん練習してます。 |
| そうです。灯くん 赤い月の夜に ここに登ってくる練習をしていたのです。 |
| 灯くん 満月の夜をはさんだ 前と後の夜に ふたつのあかりを集めることにしました。 |
| 満月のひとつ前の夜。波うちぎわでとれるあかりです。 |
| 波のしたで小さくなったり 輝いたりまたたくあかりです。大きく光ったときに さっとすくいとらねばなりません。 |
| しかも月の光と かさなったときに。 |
| 今です! |
| 月さんありがとう。ちょっとお借りしますね。 |
| 波や風に消されないように 運ぶのがまたたいへんなのです。 |
| 何回も波にさらわれ たたきつけられ 灯くんなんでこんなつらいことしなきゃいけないの?主人公だから?いいえ自分がしたいからです。 |
| つぎは砂岩塔に登ります。落ちたら さすがの灯くんでもばらばらです。 |
| これは月の光が すこしづつ砂岩塔の小さな部屋に たまったあかりです。ちょっとだけ いただきますね。 |
| 帰りのほうが 片手で岩につかまらないといけないから こわいのです。 |
| あれ なにかいるよ。 |
| ほら うしろに 足が見えてる。灯くん怖くないの?こんな夜の塔で? |
| 灯くんへいきで すたすた。 |
| まるで月夜の散歩を楽しんでるだけみたいに。 |
| ぅあっ びっくりしたけど だいじょうぶ。これはもんじゃらけ。灯くんにかまってほしかっただけです。 |
| さて もんじゃらけとすこし遊んでから ふたつのあかりを 灯くんスペシャルブレンドします。 |
| 心のなかで たすけてとさけびつづける あの砂びとを 探します。 |
| いました!やっぱり灯くんと 縁がほしいのか いつも遠くないところに おちてくるようです。 |
| これは きみのための灯りだよ 不安の闇を少しだけ照らし ゆっくりでいいから前に向かうための ささやかな灯り。 |
| ・・・ところがどうでしょう。灯くんがあんなに大変な思いをして 集めたあかりなのに 砂びとは すこし砂がとけただけで 顔をそむけて 逃げようとするのです。 |
| あの砂びとのために いっしょうけんめい作ったあかりが 力にならなかったので 灯くん がっくりよろよろ・・・ |
| そこで気分をかえるために おいしい木の実を 食べることにしました。 |
| おいしいものを食べると いい考えもうかびます。灯くんひらめきました。 |
| あのだれかににた砂びとを さがして・・・いました。 |
| 灯くんブレンドのあかりで 照らすと たちまち砂がとけて |
| 灯くん だれににた砂びとか とっくに気がついていたのです。 |
| もうひとりの自分と 灯をわけあって |
| 灯ブレンドのあかりも 二倍にしようというプランです。すごいね灯くん。 |
| 二倍のあかりで 照らすと 砂がとけて 腕がぴょこん。 |
| やったね計画成功。ふたりの灯くん見つめあってにっこりです。 |
| 砂はとけおちて中からは 流木うまれの 流木くん。よかったね。 |
| けれど流木くんそっけなく くるりと背中むけて 行ってしまいます。 |
| でもでも 聞こえた?うん聞こえたよ。すっごくちいさな虫の羽音みたいな声だったけど。そう。でも、はっきり ありがとうって。 |
| ふたりなら 喜びも二倍です。と あ きみ あかりは |
| もうひとりの灯くん 砂の中に 沈んでいきます。またね 必要なときは きっとまた会えるよ。 |
| いや だけど やっぱり びっくりして ちょっと元気がなくなるなあ。 |
| なんかやっぱり さみしいな |
| 灯くん元気だして。きみと出会ったおかげで いぢわるあなじゃこでさえ すこしだけど 自分で考えはじめたよ。なんで だれにもわけへだてなく 夕暮れはくるんだ?とかね。 |
| 考えるのが苦手ないぢわるあなじゃこだから すごい変化なのでした。 |
| 流木くん。流木くんは 50年ぶりにもとの世界にもどってきました。なにも変わってなどいません。あいかわらず 世界は心配なことばかり。でも・・・ |
| 灯くんの特製あかりも ほんのすこし流木くんの背中をおしたくらいなのです。でも・・・ |
| 流木くん すこし姿勢がよくなったかも。こんど灯くんと会えたら はっきり ありがとうといえるかも。 |
| 自分の旅の目的は すぐ忘れちゃってこんなことでいいのかな なんて時々思うよ。でもやっぱり、いろんなひとたちのために なにか夢中でやってるの、好きさ。 |
| さよなら灯くん またきてね。 |
| 奥付 |
| 奥付 |