砂の国砂のひと  長編・灯くん

砂の国砂のひと  長編・灯くん

販売価格:264円 (税込)
状態 完成
最終更新日 2012年02月14日
ページ数 PDF:151ページ
内容紹介

閲覧5000突破感謝祭。ほとんど全部、試し読みできますのでぜひ立ち読みを!灯と書いてともしびくん。灯くんはつつましい希望。砂の国の 虚無のひとたちに 希望をとどけたくて灯くんは大冒険。あなたの心にも 灯とどきますように。
試し読みで興味もたれたら 恐縮ですが めんどうでも240円で買って最後まで読んでくだされ。 ロケの費用が・・・。

目次
灯くんは 砂の国に迷いこんでしまいました。
むかし ほろびたものの骨が 荒地にころがる国です。
影が 見ています。
黒い影です。
灯くんが 歩くと
影は・・・
ひょこひょこ歩きだして
灯くんのあとを ついてきました。
影は 砂のひとでした。ずっとついてくるので
灯くんが 立ちどまると
砂のひとは 追いこした とたん・・・
灯くんに 崩れ落ちるように
倒れ込んできました。
突然で びっくりです。
うああ ばらばらだあ。
灯くん助けおこそうとしますが すごく重いのです。
おまけに 川までふたりを のみこもうとします。
崩れる崩れる
この川は 怒っているのかな?
ぅおぅ
早く 逃げないと まきこまれちゃう。
ひっしひっし!
のみこまないでよ、ちょっと待ってよ
流さないでよ まだやることがあるから
ずずっずずっ
川からはなれて 足をつけてあげて ようやく 落ち着いてきました。
あとは この手をつけて、と。あ!これ違ってる。川に流されたかな?大変だ!
すこし怖いけど のみこむ川にもどります。
ちょっとのあいだに 川は荒地を 深くえぐっていました。
ゆっくりゆっくり はるか下の川まで 崖をおりて
やっとおりたけど 砂の左手は なかなか見つかりません。
潜って さがそう
ぶくぶく ぶく おさかなくん砂の左手 落ちてこないかい?
ぷくぷく 砂の手 流れてこなかった?
ぷくぷく 砂の手 まちがって のみこんでない?
ぅあは くすぐったいと思ったら うみうしくん なにかおしえてくれるのかい? 
きれいだね からだに花をつけてるんだね。
砂の手を探すのは 大変だけど 灯くん泳ぐのは大好き。楽しんでます。
わぁ
もがいてもがいて
あぁすっきり
きらきら こぽこぽ
きらきら ぷかぷか
ぷはあ
・・・ここは?
苦しかったけど  今ので底に沈んでる左手見つけたよ。
はい、左手を探してきたよ。砂のひとは黙ったままです。
しゃりしゃり これでついたよ。砂のひとは 黙ったままです。
どうして黙ってるの?どうして歩かないの?
変なのです。灯くんの声は聞こえてるはずなのに 砂のひとは動こうとしません。
怒ってるの?よけいなことをしたのかな?
灯くんが 行ってしまうと 砂のひとは ひょろひょろしゃりしゃり歩きだしました。
たすけてもらった お礼も言わず 底なしの黒い穴に やってきて・・・
あ!
なんで?・・せっかく・・
そんなことは知らずに 灯くん歩いてます。
どうやら この砂の国のひとびとは なにかに のみこまれるまで ただ立ちつくすか なにかのはずみで ぱらぱらの砂に もどってしまうようなのです。
砂にもどってそれきりのひとと なんども砂びとになっては ただ立ちつくすものと
砂の国のひとびとが ぽつりぽつり虚空を見つめて 立っています。
 あれ?この砂のひとは・・・ だれかに にているよ。 わかる?
なんだか 知らないひととは 思えません。だれににてるかな?
話しかけてみても やっぱり黙ったまま 動こうともしないので さびしいです。
灯くんが 去ったとたんに 砂びとは ぱたりと倒れ
あっというまに ただのぱらぱらの砂に なってしまいました。
灯くんは のみこむ川の上流に来たようです。
あ またあのばらばらになる 砂のひとが
こっちの砂ひとは 起こしても 心がないかんじ 心の奥まで砂のひとです。
ところが この二回目の砂ひとからは やっぱり たすけてと心のこえが きこえるのです。だから灯くん しらんぷりなんかできないのです。
でも せっかく体を もとどおりにして 動けるようにしてあげても
灯くんに たすけをもとめておいて なのに動けるようになると しゃかしゃか歩いて・・・
また 自分で 穴に飛び込んで この国のどこかに 墜落してくるのです。
困ってしまいますが 灯くんくよくよしません。こんなときは わざと のんびりです。そうすれば なにかいい考えも うかぶかも。
月がでてきて 灯くんにいいこと教えてくれました。
ふあ もう眠くなっちゃった。また 明日にしよう。
砂のベッドでおめざめ。なかなか寝心地よかったね。
朝はやくから ほろびたものを見ました。これはいい前兆?そう、灯くんにはなんでも吉兆なんです。ほろびてもきれいに色がのこってるし。
ありゃこれが吉兆の?出会い?悪役いぢわるあなじゃこに こんなところで会うなんて。泥の国にいたはずなのに・・・まさかまた・・・
いぢわるあなじゃこは 砂のひとになっていました。この国ではめずらしく 自分で動ける砂びとなのに・・・それなのに・・・
することといえば こんなふうに だれかれなしに 毒をはかないではいられないのです。灯くんを行かせまいと邪魔をします。
からだをねじって のがれるだけ。 灯くんは けんかがきらいです。
いぢわるあなじゃこ動かなくなって なんだか自分が悲しくなってるような。
あっというまに砂に。いぢわるあなじゃこ こまったやつなんだけど 灯くんなにもしてあげられず さびしいかんじがします。
え 灯くん いきなり
えぇー そんなとこ
うわぁ 灯くん急にどこ登ってるの?
灯くん 今はなにをするべきなのか はっきりわかっています。
もっと早くここに登れば いぢわるあなじゃこも たすけてあげられたかな つい思ってしまいますが・・・
だけどここであかりがとれるのは 赤い月のでるほんの一瞬しかないので どのみちいぢわるあなじゃこには 間に合わなかったんですよ。
このあたりで 砂岩塔のあかりがとれるはず。灯くん練習してます。
そうです。灯くん 赤い月の夜に ここに登ってくる練習をしていたのです。
灯くん 満月の夜をはさんだ 前と後の夜に ふたつのあかりを集めることにしました。
満月のひとつ前の夜。波うちぎわでとれるあかりです。
波のしたで小さくなったり 輝いたりまたたくあかりです。大きく光ったときに さっとすくいとらねばなりません。
しかも月の光と かさなったときに。
今です!
月さんありがとう。ちょっとお借りしますね。
波や風に消されないように 運ぶのがまたたいへんなのです。
何回も波にさらわれ たたきつけられ 灯くんなんでこんなつらいことしなきゃいけないの?主人公だから?いいえ自分がしたいからです。
つぎは砂岩塔に登ります。落ちたら さすがの灯くんでもばらばらです。
これは月の光が すこしづつ砂岩塔の小さな部屋に たまったあかりです。ちょっとだけ いただきますね。
帰りのほうが 片手で岩につかまらないといけないから こわいのです。 
あれ なにかいるよ。
ほら うしろに 足が見えてる。灯くん怖くないの?こんな夜の塔で?
灯くんへいきで すたすた。
まるで月夜の散歩を楽しんでるだけみたいに。
ぅあっ びっくりしたけど だいじょうぶ。これはもんじゃらけ。灯くんにかまってほしかっただけです。
さて もんじゃらけとすこし遊んでから ふたつのあかりを 灯くんスペシャルブレンドします。
心のなかで たすけてとさけびつづける あの砂びとを 探します。
いました!やっぱり灯くんと 縁がほしいのか いつも遠くないところに おちてくるようです。
これは きみのための灯りだよ 不安の闇を少しだけ照らし ゆっくりでいいから前に向かうための ささやかな灯り。 
・・・ところがどうでしょう。灯くんがあんなに大変な思いをして 集めたあかりなのに 砂びとは すこし砂がとけただけで 顔をそむけて 逃げようとするのです。
あの砂びとのために いっしょうけんめい作ったあかりが 力にならなかったので 灯くん がっくりよろよろ・・・
そこで気分をかえるために おいしい木の実を 食べることにしました。
おいしいものを食べると いい考えもうかびます。灯くんひらめきました。
あのだれかににた砂びとを さがして・・・いました。
灯くんブレンドのあかりで 照らすと たちまち砂がとけて
灯くん だれににた砂びとか とっくに気がついていたのです。
もうひとりの自分と 灯をわけあって
灯ブレンドのあかりも 二倍にしようというプランです。すごいね灯くん。
二倍のあかりで 照らすと 砂がとけて 腕がぴょこん。
やったね計画成功。ふたりの灯くん見つめあってにっこりです。
砂はとけおちて中からは 流木うまれの 流木くん。よかったね。
けれど流木くんそっけなく くるりと背中むけて 行ってしまいます。
でもでも 聞こえた?うん聞こえたよ。すっごくちいさな虫の羽音みたいな声だったけど。そう。でも、はっきり ありがとうって。
ふたりなら 喜びも二倍です。と あ きみ あかりは 
もうひとりの灯くん 砂の中に 沈んでいきます。またね 必要なときは きっとまた会えるよ。
いや だけど やっぱり びっくりして ちょっと元気がなくなるなあ。
なんかやっぱり さみしいな
灯くん元気だして。きみと出会ったおかげで いぢわるあなじゃこでさえ すこしだけど 自分で考えはじめたよ。なんで だれにもわけへだてなく 夕暮れはくるんだ?とかね。
考えるのが苦手ないぢわるあなじゃこだから すごい変化なのでした。
流木くん。流木くんは 50年ぶりにもとの世界にもどってきました。なにも変わってなどいません。あいかわらず 世界は心配なことばかり。でも・・・
灯くんの特製あかりも ほんのすこし流木くんの背中をおしたくらいなのです。でも・・・
流木くん すこし姿勢がよくなったかも。こんど灯くんと会えたら はっきり ありがとうといえるかも。
自分の旅の目的は すぐ忘れちゃってこんなことでいいのかな なんて時々思うよ。でもやっぱり、いろんなひとたちのために なにか夢中でやってるの、好きさ。
さよなら灯くん またきてね。
奥付
奥付