ガレージセールで買った自転車で走ると、セコイアやフェニックスの緑に、赤い瓦の校舎群が見事な調和を見せてつづき、それから、ムーンバークまで二キロ。バイクラインに沿って大きくカーブすると、レンガ造りの小さな我が家が見えてくる。これがモネと杏平の愛の巣。二人の留学を機に結婚し、日本人社会からはなれて、アメリカ社会にとっぷり漬かってみることにしたのだ。そんなある日の真夜中、玄関ドアが叩かれていた。「おれだ！　ジョーだ！　ローザ元気かい？　ジョーだよ！！」
　‥‥‥これが、号砲のように、二人はアメリカ社会の暗部に、引き込まれていきます。二人は賢明に、協力してこの難関を突破しようとするのですが‥‥‥。モネは泣いてはいなかったのです。闘ったのです！！　現実の留学生活を下敷きに構築されたミステリーは、それなりに説得力をもっているようです。視点の珍しさが、面白い！！