１０年ほど前に、横溝正史ミステリー大賞に応募して、予選１３編までに残った作品です。本格ミステリーより冒険活劇です。たった１０年前のことなのに、読み返してみると、当時の経済状況が今とは全然違うのに驚かされます。原油が１バレル１５ドル、中国経済も日の出前の状況でした。舞台は日本、アメリカ、香港、中国に渡って繰り広げられます。原稿用紙７００枚自分では面白いと思っています。
　　世界最強のヘッジファンドを率いるグレイは、中国が秘密裏に巨大油田を発見、開発しているという情報を得た。そこで石油の先安を見込んで先物を売りながら、中国自身が油田発見の情報を発しないのなら、グレイがマスコミを使ってセンセーショナルに発表し、大きな利益を得ようとする。確実な情報を取るためにガーランドという白人を香港及びタクラマカン砂漠へ行かせ、裏を取り始める。
　日本では新和商事の金属部社員、雨宮竜一（本編の主人公）が香港への出張を命ぜられたが、古参社員の田巻女史から何か裏がありそうだと忠告を受ける。また、元上司で社長派閥の林田部長から会長派閥が香港支店を利用して失策経営の含み損を隠しているらしいという話を受け、会長派追い落としのために一肌脱ぐように迫られる。