姥捨会社


著: kkijima

姥捨会社

著:kkijima
販売価格:528円 (税込)
状態 執筆中
最終更新日 2012年02月13日
ページ数 PDF:112ページ
内容紹介

 事業に失敗した北尾正志五十六歳は、別荘の建築・販売を専門にする城北エステートに再就職した。この会社は、高齢者の採用が異常に多く、老人が元気で働く定年の無い会社として有名だった。特に資格も無く年齢ゆえに再就職に苦戦していた北尾は給与などの条件に不満はあったものの苦渋の選択をした。入社してみると、毎日早朝にマラソンがあり、朝と昼は社員自ら自然食の食事を作って食べることを知って驚く。会社はまるで老人の再生工場のようであった。雇用契約もハローワークの求人票では契約社員となっていたものが、二カ月更新の業務委託契約であり、求人票とは全く異なっていたのにも驚いた。定年が無いというのも嘘で、社長の胸三寸でいかようにも首が斬れるようになっていた。
社長の徳田錦は奄美大島出身でバブル期にアメリカから安い住宅を大量に輸入して高く売り、大儲けした立志伝中の人物であった。しかし、住宅へのクレームが多かったのとバブル崩壊で一敗地にまみれ今の会社を再興した。その経験が活きたのか、倒産しかかった会社二十社以上を救済して再建し、傘下に収めていた。再建屋としても有名になったが、再建というのも表面上のことで、実際は再建会社の資産を食いつぶして自分の会社だけが儲けていた。高齢者の大量採用といい、多くの倒産企業の再建といい、そこに共通しているのは、ほかには生きる道が無い弱者の弱みに付け込んで絞れるだけ絞って生き血を吸い、吸い尽くすといとも簡単に捨てるということだ。ある社員はこのやり方を姥捨てと罵り、会社を姥捨会社と呼んだ。実際、この会社のやり方はある種の貧困ビジネスだった。

目次
十一
十二