たまたま拾った鍵束。屋敷に招き入れられ、外套探しを命じられる男。とてつもなく広い屋敷のなかには、数えきれないほどの部屋があって…。
「道の上に金属の塊が落ちていた。近寄ると、それは鍵束だと分かった。男は鍵束を見てほおを掻いた。誰かがこれを必要としているに違いない。拾うと、先にある屋敷を見た。年月を重ね深い焦茶色になった煉瓦で組まれた壁が大きな箱を形作り、そこに正方形の窓が等間隔に配置されている。大きく堅牢な扉が人々を寄せつけないいかめしさを出していた。ここの住人が落としたに違いない。入り口にある鉄柵の門が、かすかに開いて風に揺れている。」(本文より)
著:長谷川明治 『季刊わせぶん冬号'10』収録。
鍵束を拾う話1 |
鍵束を拾う話2 |
鍵束を拾う話3 |
鍵束を拾う話4 |