未払い残業問題は、厚生労働省労働基準局基発第0523003号「賃金不払残業総合対策要綱について」という通達によって企業への指導、監督が実施されている。
現在まで継続的に運用されており、社会的要請からこれからも適切な指導と監督がなされるだう。
昨今、メディア等の報道でいくつかの企業名があがっているが、決して大企業、中堅企業ばかりではない。
経験からは、平成25年2月従業員30数名規模の企業でも臨検に遭遇した。
固定残業制が機能していたこと、パソコンのログから就業時間の実態確認ができたが、それでも労働弁護士をいれ、より明確な運用をはかるための改善をおこない最終的な報告をおこなった。
入社と同時に課題はすぐに理解できるが、小企業の場合は、先ず利益管理からはじめる。
利益をいかに確保できるか、といった視点でアクションを起こすのであるが、利益確保の目処が立てば、次の施策として人事労務の改善を目指すことになる。しかし臨検となると、このようなスケジュールはすべて破棄し、集中的に実態把握と改善を実行することになる。入社間もないケースでは、運次第と覚悟を決めるしかない。
だからこそ企業は、利益が確保できているときに、人事労務の問題に限らず適切な改善を実行しておく必要がある。
本書は、経営者へ物言える者には活用でき、あるいは真摯に労務管理と向き合おうとしている経営者には有用となるだろう。
経営とは、人生以上に長丁場であり、正攻法で現実を直視することから次の成長がはじまるものである。
企業は人と同じであり、法律は同じであっても、企業の運営は個別具体的に大きな違いがあるものだ。本来、同じ法律でも自社に合った運用方法や従業員との関係構築が必要となる。
労働基準法は、従業員との関係構築の基礎となる重要な法律なのである。