何時の間にかスペインに憧れていました。一つはアルハンブラ宮殿に憧れて。
「アルハンブラ宮殿の思い出」タルレガ作曲のギターの名曲です。この曲が弾きたくて何時の間にか僕もギターを手にしていました。トレモロの合間に見え隠れするまだ見たこともない宮殿への思いは、自分が思う以上に大きくなっていました。
もう一つは、エル・グレコに出会いに。独特のタッチでキリストや12使徒たちを描く中世のギリシャ人。その人の絵に何時の間にか魅入られていました。傑作と呼ばれる作品の前に立つために。そうして、その人が住んでいた街並みを自分の足で歩いてみるために、スペインという響きに呼ばれました。
そうして、最後に、アントニオ・ガウディーの建築を見るために。写真やテレビで眺めた青い空に映えるサグラダ・ファミリアは、まぶたの裏に焼きつくだけの印象を僕に残していたのです。
そうして急に思い立ったように旅立ったスペインは、想像以上の印象で僕を迎えてくれました。
人は旅の思い出をどんな風に記憶するのでしょう。ある人は写真に、ある人は絵に。ある人は日記の断片として。そうして僕は、スペイン滞在中のメモを詩に換えて。憧れだったスペイン旅行の詩のアルバムです。