この『臨床・連動療法』は仙台の医師であり、臨床家でもあった故橋本敬三先生が創案された『操体法』が元になったものです。
操体法の原理をシンプルに説明すると、例えば曲げて痛む関節があったとしたら、「もしその関節を伸ばしたときに痛みを感じなかったり、心地よさを感じたとしたら、そっちの方向に動かすと、曲げた時の痛みが消えたり、楽になるよ」と体が教えてくれると言うものです。
また『操体法』では〝連動〟を重視していますが、この『臨床・連動療法』は特にこの関節の運動にによって発生した力を〝増幅〟して、手首や足首の運動だけで腰痛や肩こりなどを改善しようと言う、言わば〝運動療法〟の一種です。
例えば手首や足首に与えた運動性の刺激が、何らかの伝導作用によって離れた部位まで伝わり、その部分の痛みが解消される事が多くあります。
『操体法』の効果を上げるためのコツとして、この連動作用を上手に活用すると言うのがありますが。『操体法』の持つこの連動作用の効果をもっと強力に促進する為に、私は梃子の活用とより積極的な関節の固定によってこの『臨床・連動療法』を開発しました。
この〝梃子〟と〝固定〟は従来の『操体法』でも用いられていましたが、私は自分の臨床経験から、この梃子に道具を用いる事で、より高い連動効果が得られる事を発見したのです。
梃子に用いる物としては、弾力性のある例えば適度に空気を抜いたテニスボールや高反発のクッション素材などを用いると、連動作用をより促進出来る事と、反復動作の効果を高められる事も判っています。
手首の運動と、抵抗と、梃子の作用で何故肩こりが解消されるのか?また足首の運動と、抵抗と、梃子の作用で何故腰痛などが解消されるのか?
その理由の解明が完全にできている訳ではありませんが、私としては東洋医学の立場からは〝経絡〟や〝経筋〟の働きを考え、また最近知られる様になったアナトミー・トレインなどで言う〝筋膜〟の働きも考えなければなりませんでした。
さらに力学的なつまりバイオメカニクスによる考察も重要です。
私は一介の治療家であり、研究者では無いのであくまでも自分の臨床の中と、限られた条件の中での試行の繰り返ししか出来ませんが、それなりの仮説も紹介しています。
元々は私の主催するシンセティック代替療法学院の『操体法』の上級コースに使うテキストとして書いたものなので判りにくい部分も多々有るとは思います。
その場合は是非先に『操体法』関連の書籍を一読されてから本書をお読みいただきたいと思います。