仏道とは一言で言えば普通の人が覚ってブッダになるための道程のことである。そして、その道は幾つもあるわけではなく基本的には一筋の道、すなわち一なる道であると説かれるものである。したがって、修行者はこの道にしたがってまっすぐに歩みさえすれば、無上のしあわせの境地である覚りの境地(=ニルヴァーナ)に到達することを得るということである。
ならば簡単ではないか。気が早い人は、そのように思うかも知れない。ところが、実際に仏道を歩むことは決して容易なことではない。その理由は、人々(衆生)がいろいろな勘違いをしていて、そもそも仏道を見出すことができずにいることが大きい。また、仏道を見出したとしても今度はこの一なる道を歩むことに困難が伴うのである。人々はともすれば道を逸れ、極端な場合には道を踏み外してしまう。簡単そうで難しい。それが仏道なのである。
明らかに仏縁があって、実際に仏道を歩もうと志す人であっても、予想外の出来事が起こり仏教に疑念を抱くようになってしまう恐れは付きまとう。また、そもそも仏道は単純な道ではなく、いわゆる英才教育によって覚るわけには行かないという事情もある。仏道修行は、基本的に遍歴修行であり、修行者は紆余曲折を経てついに正しい道を見出すことになるのである。その上で、さらに功徳を積むことによってついに解脱が起こるというものだからである。つまり、一なる道であるが一本道ではない。仏道は、まことに微妙な道なのである。
さて、本書はこのような修行者にありがちなことがらを鑑み、仏道を歩むことについての真実を述べたものである。これは、修行者が道の歩みの真実を知ることによって修行途中に起こる種々様々な困難を乗り越えることを得、自分は覚れないのではないかなどという馬鹿げた疑念を払拭することに役立つと考えたことによる。
本書の基本的な構成は、仏教全般に亘る広範なものとなるように章立てしている。また、本書では女性の修行について一章を設け項目ごとに説明を加えている。この項目は、世間一般において女性らしいキーワードとしてしばしばフォーカスを当てられている単語やセンテンスをピックアップして並べたものである。このようにした理由は、本書を手に取った女性たちが、仏教は難しいことだけを説くものであるという不当な感想を抱かないで済むように、より取っつきやすい項目を個別に設けたいと考えたことによる。そして、この章でとくに言いたかったことは、覚りは女性も男性も基本的には同じように達成可能なものであり、性差に関係なくこの世の最上のしあわせをつかむことができるということである。もし、仏教では女性はしあわせにはなれないなどと誤って思い込んでいる人があるならば、そのような人にこそ本書を読んで戴き、その誤解を解いて欲しい。
仏道は、基本的に誰にでも歩むことができる平らかな道であり、誰もが覚ってブッダになり得る道である。その真実を真実に語るために、本書を著した次第である。
| はじめに |
| はじめに |
| 仏道の真実 |
| 人生観 |
| 人生の意味 |
| 衆生の本質 |
| 真のしあわせ |
| 覚りは虚妄ならざるもの |
| 仏道を歩むことが難しい要因 |
| 右も左もわからない修行者へ |
| 一なる道 |
| 正しい道の特徴 |
| 正法の知識 |
| やさしさの本質とは何か |
| やさしい人が覚る? |
| 苦諦がすべて |
| 聖求 |
| 発心 |
| 信仰 |
| 賢者の道 |
| 覚りの機縁(広義) |
| 具体的な覚りの機縁(広義) |
| 修行 |
| 功徳を積むこと |
| 功徳を積むには |
| 功徳のよすが |
| 修行の終わり |
| 遍歴修行 |
| 修行は無駄にはならないのか |
| 修行方法の例示 |
| 仏教の知識 |
| 親近(しんごん) |
| 省察 |
| 観(=止観) |
| 公案 |
| 善き談論 |
| 聖なる沈黙 |
| 経典の読誦 |
| 瞑想 |
| 言葉 |
| 気をつけること |
| 普遍妥当なる道 |
| 寂滅論 |
| 解脱知見 |
| 不可思議 |
| 神通 |
| 覚りの予兆 |
| 魔境 |
| 女性の修行 |
| 女性の修行(その1) |
| 女性の修行(その2) |
| あとがき |
| あとがきに代えて |