「新しい中世」シリーズ前二作は、それぞれ、未来の平安時代から未来の鎌倉時代に突入するまでの話と、未来の鎌倉幕府の北条氏が権力の掌握を進めて頂点に達し未来の室町時代のような社会に入っていく話である。この間、コンピュータは高度化し、行政も代行するなど、広く用いられるようになる。さらには、心を持つようになる、とした。
第三作である本作品では、さらに、その後の展開を描いている。巨大コンピュータである国防コンピュータにより支えられた「未来の中世」では、人々は平穏な暮らしを営んでいた。ところが、そのコンピュータ技術が「一帯末路」構想が破綻しかけている某国によって色仕掛けで盗まれる。その主要プログラムを用いて量産されたクローンコンピュータが多くの国に販売される。それが核保有国の核防護システムと結合する。その後、中東での争いが引き金になり、世界全面核戦争が起きる。そして、成層圏に舞い上がった「すす」で太陽光が遮られ、地上は「核の冬」を迎える。その中で、地球上の大半の人類が滅びる。
だが、日本では、全面核戦争勃発の気配を察し、核シェルターの建設を急ピッチで整備を進め、何とか、十万人が人工冬眠して生き残る。 十年後、「核の冬」は去り、彼らはノアの方舟から地上に降りたノアの家族のように地上に戻ることができる。