日本にとって天皇とは何か。しばしば矛盾する国論を統合し、歴史のダイナミックな展開を可能にする支点に天皇がなり得てきたのはなぜか。その無私の精神の中に国民の意志を包み込んでいく力は、権力ではなく、祭祀に根差す権威である。権威と権力を二分してきた日本の政治構造の源泉を探る。(『近代主義を超えて』原書房 1988年 所収)