《わたしには、未来が見える。》

ベトナム、熱帯の町ダナン。
ブーゲンビリアの花が咲き乱れる家にすむある少女がかさねた禁じられた愛のいくつかの記憶。
近親者との、少女同士の、あるいはトランスジェンダーの少年との交歓、
そして現れる色彩をなくした死者たちの影。
少女は夢の中に人々の過去と未来を見出しながら、知的障害を抱えた従姉妹の声に耳を澄ました。

白濁した空の下で、雨に打たれる少女が見つめたさまざまな世界の断片。
かつての戦争の痕跡と、再開発のはざまにゆらめく海辺の町の、異国の思春期の物語。

そして転生と愛が夢と現実の中に目醒めていく…。

ベトナム中部の町、ダナン市を舞台にした、痛みと官能の長編小説。
時間が錯綜し、転生と存在の秘密の中に彷徨いこみます。

転生とギリシャ神話をモティーフに、生と死を見つめようとする連作の中核。その第二篇。
二分冊の第二巻。

思い切りエロティックで、限りもなく繊細で
どうしようもなく純で切なく、救いようもなく残酷で、にもかかわらず美しい。
そんな作品を目指しました。

連作《イ短調のプレリュード、モーリス・ラヴェル》第七話