粉になった女


著: エンマ

粉になった女

著:エンマ
販売価格:550円 (税込)
状態 完成
最終更新日 2018年10月18日
ページ数 PDF:29ページ
内容紹介

泡が落ちてくるのは、空が落ちること。顔に空が張りついて、もう世界が終わりになる、空じゃない、街だ、街が崖から落ちてくる、わたしばかりに落ちてくる。男の方に女は逃げるが、瞼がむかつき、目玉が転がり出、虹色に覆われた髪の上を震動が過ぎ、泡は重く流れ落ちて、女の背の大きく開いた襟元がぶつぶつ煮立ち、それを振り落とせず、自分の背から逃げ、顔を手でおおう。女の外で泡がふくれる、女は無言の自転をする。女の体中に細かい発疹ができ、やがて乾いて粉まみれになり、白い粉はときに何枚か着ている服を通して外側に浮き出す。ほんとうは、日常こんな細片をこぼしつづけていたのだ。しじゅう体をこぼし、風に吹き飛ばし気づかずにいた。それはほんとうは女だけでなく、誰もが、地面にこぼした体の粉を、そそそ、そ、と吹き流して、窪みに吹き溜めるというふうに……、ときに舞い上がりもしているらしい。地震のあと、粉になった女の未来は?