くぐり抜けた女


著: エンマ

くぐり抜けた女

著:エンマ
販売価格:550円 (税込)
状態 完成
最終更新日 2018年10月18日
ページ数 PDF:24ページ
内容紹介

女は体の中を横切っていく翼のような大きな耳になって、ぶはっぶはっという音を聞きつづけたあと、まだよく拡がりきらない眠い小さな耳に戻って、渦巻いてくる同じ音を聞く。じっと動かずにいて、やっと起きあがる。いたずら着ふうの寝巻を細い腰のあたりまで滑り落して廊下に出るが、すでにそこまで充ちてきている真っ白な湯気が、素早く女の全身を包んでしまう。女は何ひとつ目印なしに進んで、熱風のかたまりに口をふさがれ、慌てて身に纏っていたものまで取り落として見失う。吐息は変に甘いしめった声になる、わかるのは怒張してくる首の脈拍。熱い蒸気は女の体のいたるとこらから汗を搾り出して皮膚の表面を水溜りにする。―――やがて、女は白い宇宙をさまよい、白い山脈の尾根を歩いて、亡き父に出会います。現実と、白い宇宙を行ったり来たり!! 女はくぐりぬけることが出来るのでしょうか?