われわれは、世界の外から世界を認識しているのではなく、世界の内から世界を認識している。また、われわれは、世界の外から行為しているのではなく、世界の内から行為している。そして、その認識と行為が、自己形成的世界を成り立たせている。とすれば、自己と世界、主観と客観を分離して考えた近代哲学や近代科学を乗り越え、存在と認識と行為の深いつながりについて考えねばならない。この論文は、そのような世界内認識と世界内行為の立場に立ち、主観・客観図式を廃棄し、無数の要素の相互連関から自己自身を形成する世界、つまり〈複雑系〉の認識論的基礎を与える試みである。