室町幕府第四代将軍の足利義持は後継者を決めずに死んだ。次の将軍は「くじ」で選ぶことになり、選ばれたのが足利義教である。「くじ引き将軍」そう陰口をたたかれていた義教は、次第に凶暴な性格を現わしてゆく。笑顔を見せたという理由で公家から所領を召し上げたり、酌の仕方が悪いと言って上臈の髪を切り尼にしてしまったりした。幕府の宿老も次々と粛清された。その強権政治は織田信長の晩年以上だったといわれている。人々は、義教のことを「悪御所」と呼び、「万人恐怖」と恐れていた。
そんな将軍義教だが、宿老の一人赤松満祐によって暗殺されてしまう。「古来、こんな犬死は聞いたことがない」とされた嘉吉の変がそれである。
しかし、嘉吉の変には謎が多い。なぜ将軍は赤松屋形に出掛けて行ったのか。あっさり殺されたのはなぜか。その真相を物語としてたどってみようと思う。
荻の葉は女の笛吹きである。ある日の夕方、京の郊外を歩いていた荻の葉は、奇妙な笛の音を聞いた。はるか遠くで奏でているにもかかわらず、はっきり聞こえる。胸を掻きむしられるような、悲しい響きだった。誘われるようにたどりついた先には、老いた楽師が龍笛を握ったまま倒れていた。すでに死期が迫っていた楽師だったが、荻の葉が笛吹きであることを知ると、必死に叫ぶ。
「おそろしいことじゃ、笛が呼び寄せたのに違いない。笛を吹いてはならんぞ」
そう言って楽師はこと切れた。その笛こそが名笛として知られた「柯亭」だった。柯亭を手に入れたことで、荻の葉は巨大で恐ろしい陰謀に巻き込まれて行く。
                            
| 登場人物 | 
| 登場人物 | 
| 龍笛 | 
| 龍笛 1 | 
| 龍笛 2 | 
| 龍笛 3 | 
| 龍笛 4 | 
| 楽人 | 
| 楽人 1 | 
| 楽人 2 | 
| 楽人 3 | 
| 楽人 4 | 
| 楽人 5 | 
| 悪御所 | 
| 悪御所 1 | 
| 悪御所 2 | 
| 悪御所 3 | 
| 巻き尾 | 
| 巻き尾 1 | 
| 巻き尾 2 | 
| 巻き尾 3 | 
| 巻き尾 4 | 
| 笛一者 | 
| 笛一者 1 | 
| 笛一者 2 | 
| 笛一者 3 | 
| 笛一者 4 | 
| 飾り刀 | 
| 飾り刀 1 | 
| 飾り刀 2 | 
| 飾り刀 3 | 
| 飾り刀 4 | 
| 神域 | 
| 神域 1 | 
| 神域 2 | 
| 神域 3 | 
| 神域 4 | 
| 更級 | 
| 更級 1 | 
| 更級 2 | 
| 更級 3 | 
| 至音 | 
| 至音 1 | 
| 至音 2 | 
| 至音 3 | 
| 至音 4 | 
| 鎧 | 
| 鎧 1 | 
| 鎧 2 | 
| 鎧 3 | 
| 鎧 4 | 
| 畜生 | 
| 畜生 1 | 
| 畜生 2 | 
| たろう | 
| 穴 | 
| 穴 1 | 
| 穴 2 | 
| 穴 3 | 
| 穴 4 | 
| 穴 5 | 
| 宴席 | 
| 宴席 1 | 
| 宴席 2 | 
| 宴席 3 | 
| 宴席 4 | 
| 仕度 | 
| 仕度 1 | 
| 仕度 2 | 
| 仕度 3 | 
| 暗雲 | 
| 暗雲 1 | 
| 暗雲 2 | 
| 暗雲 3 | 
| 鏡 | 
| 鏡 1 | 
| 鏡 2 | 
| 鏡 3 | 
| 鏡 4 | 
| 鳥ノ序 | 
| 鳥ノ序 1 | 
| 鳥ノ序 2 | 
| 鳥ノ序 3 | 
| 鳥ノ序 4 | 
| 鳥ノ破 | 
| 鳥ノ破 1 | 
| 鳥ノ破 2 | 
| 鳥ノ破 3 | 
| 鳥ノ破 4 | 
| 鳥ノ急 | 
| 鳥ノ急 1 | 
| 鳥ノ急 2 | 
| 鳥ノ急 3 | 
| 鳥ノ急 4 | 
| 颯踏 | 
| 颯踏 1 | 
| 颯踏 2 | 
| 颯踏 3 | 
| 颯踏 4 | 
| 颯踏 5 | 
| 奥付 | 
| 奥付 |