高校三年生で不登校になって以来、二年間に渡ってひきこもり生活を続けている青葉(あおば)には、四つ歳の離れたイツキという名の弟がいる。
ある日彼女は、巨大な水槽の中に入れられたイツキの夢を見る。
水槽の中の弟は小学生の頃のままの姿なのに、話し方や態度は現実のイツキと変わらない。青葉が状況をつかめずにいる中、彼はグラスに入った赤い液体とストローで金魚を生み出して見せた。
「その液体、なんなの」と問いかける青葉に、イツキは「金魚の素でしょ」と答えて、金魚の起源について語り始める。それに耳を傾けるうちに、青葉の中にふとある疑問が浮かんだ。
「イツキはそこから自分の意思で出られるの?」という質問に、「青葉はどっちがいい?」と問い返された青葉。そのことがきっかけで、彼女は自分の中にある歪んだ思いを自覚し始めることになるのだが……。
『第16回・女による女のためのR-18文学賞』一次選考通過作品。
(原稿用紙約57枚)
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