さて、今回は、谷崎潤一郎の有名な『鍵』の「後半部」になるが、それは、「第三部」と「第四部」それに「最終部」とを統合したものであり、その内容は、次のようなものである。――まず、「第三部」(木村との性交渉後)であるが、それは、夫(大学教授)は、大学病院の「眼科」と「内科」とで診察を受けるが、その結果、「血圧」が異常に高いということで、「血圧降下剤」をはじめ、コイトス(性交)を慎み、アルコールも止めないといけないと言われるが、夫は、その忠告を無視し、相変わらず「酒」と「淫慾」に溺れている。――一方、妻(郁子いくこ)と木村の二人は、大阪のある「場所」で密かに逢引きを重ねているとともに、夫の病状は目に見えて悪化していく。
次に、「第四部」(夫が倒れる)であるが、それは、倒れた「夫」(大学教授)を看病する「妻」(郁子)を中心とした内容であり、夜中は、妻(郁子)が一人で看病し、朝は、七時頃、婆(ばあ)やが来て、食事の支度、八時頃、看護婦の小池さんが起き、八時半頃、病人の朝食になる。――正午、病人の昼食。午後一時、町医者の児玉さんの来診。その後、妻は、二階で「仮眠」を二三時間取り、この時に日記を書く。五時頃、妻(郁子)は、二階から降りて、五時半頃、病人の夕食になる。夜は、八時頃、敏子が帰り、九時頃、婆(ばあ)やも去る。十時、小池さんは二階へ行き、十一時、庭に(木村の)足音が聞える。裏口から女中部屋へ通す。十二時、彼去る。という基本的な「生活パターン」を繰り返す。――最後は、「最終部」であるが、それは、この正月以来の日記、夫の「日記」と妻の「日記」とを仔細に読み比べてみれば、二人がどんな風にして愛し合い、溺れ合い、欺き合い、陥れ合い、そうして遂に一方が一方に滅ぼされるに至ったかのいきさつを、今こそその一つ一つを事細かに「検証」していくという内容であり、興味や関心がありましたら、ぜひとも訪ねて見てください。
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