特集
子どもの貧困、陸前高田学校によせて
◆『福祉のひろば』と子どもの貧困
『福祉のひろば』が、子どもの貧困問題を本格的に取り扱ったのは二〇〇八年一〇月号でした。そのタイトルは、〈「子どもの貧困」に向き合って──容認できない子ども時代の不平等、不公正の実態と解消のために──〉でした。
当時、山梨立正光生園園長だった山田勝美さんは、施設で暮らす子どもたちの「あてのなさ」を問いかけました。子どもが大学進学を希望しても、国の制度として認められていない。加えて、高校を卒業して家庭復帰できなければ、基本的に施設には入れない。就職して、一八歳の段階で、どの程度将来を確信して選択できているのだろうか。将来を迷える時間
と場が充分に保障されていないのである。(抜粋)
確かに、進学や施設入所の延長は一部認められてきました。しかし、制度が柔軟になったからといって、子どもたちの現実が生やさしいものでないことは変わりありません。多くは、施設という常に見守りのあった生活から、自立という名の「自己責任」の社会に、帆の上げ方も舵の取り方も、大人社会での生き方や関わり方を知らずに、船出するのです。施設の職員たちも、不安を抱えながら、「いつでも相談しにおいでや」と声をかけながらも、目の前にいる子どもたちにその目線を戻していくのです。
今号の特集では、「子どもの貧困」というテーマと、「第二回陸前高田学校」の概要を取り上げました。戸羽太市長は講演で「震災の教訓を踏まえ、私たちは集え、人として生きる包摂のまちをつくりたい」と語られました。社会のなかで生きる、暮らす場の存在と、その場を維持し、専門的にサポートする人々の存在は子どもの貧困においても震災復興においても、共通の課題であり、震災から六年、子どもの貧困問題を大きく取り上げて一〇年近くなりますが、それらは今も求められ続けています。(編集主幹)