人生が変わる！　一度も行ったことのない大阪の転勤は、わたしの腕が試されているような気がした。新天地での生活に胸を弾ませたものだ。それは昭和３０年代の大阪。朝の連ドラでおなじみの五代友厚を思い出してほしい。かれら大商人が築いた名残、いわば「大大阪（だいおおさか）」が戦争をへて今なお燻り、余韻している時代でもあった。そこに、がむしゃらに働く高度成長期の「モーレツ」の空気が流れ、熱く沸騰していた。まだ新幹線は開通していなかった頃、東京から「人・モノ・金」の血液の熱い循環がはじまった。再生した若々しい日本が雄々しく立ち上がろうとする時代でもあった。その時代に一介のサラリーマンであるわたしがどう生きたのか、その記録をここに残しておこうと思う。