私は武蔵野と呼ばれる土地の所沢に生まれ育ちました。
父母、祖父母、ずっとずっと昔の先祖達も。
この故郷に無条件に好きな風景があります。
武蔵野を象徴するような、風の吹きぬける清々しく大らかな場所。
それは畑、田んぼ、空き地、グラウンド、公園、川であったりします。
「海や山のない見渡すかぎりの野」
そんな風景が武蔵野と呼ばれる土地の原風景とされています。
この土地に生きた先祖の血、DNAが好きにさせるのかはわかりません。
開発され武蔵野的風景のなくなった所沢に住む人間の郷愁や憧憬にも思えます。
けど、理由を求めるのも意味がないでしょう。
自分の故郷の風景を愛す。
単純で当たり前なことですが、とても大きな意味があります。
この「武蔵野写真」というシリーズは3年前埼玉県立近代美術館で発表しました。
今でも撮り続け、これから何年、何十年と撮り続けていきます。
私が写した風景は変わるかもしれませんし、変わらないかもしれません。
写真を撮り、記録し、記憶し、発表し続ける。
そうすることで故郷への愛、想いを共有できると信じます。

目次
武蔵野の「田」
武蔵野の「畑」
武蔵野の「川」
武蔵野の「野」