中学一年生の倉橋古都(くらはしこと)は二学期に入ってから毎日美術部をさぼり、放課後一人自転車でぶらつき時間を潰す。家族の不仲のため、古都は前のように絵を描く気持ちになれず、そして家に帰りたくなかった。
ある日、放課後に立ち寄った森の中で怪我をし、道に迷ってしまう。助けを求めノックした森の中のログハウスに、「マナコさん」という不思議な女性が一人住んでいた。以来、古都は毎日彼女の家に通うようになる。
マナコさんは年齢や背景などが明らかではなく、変わった女性だった。美しい墨絵を描き、動物と会話し、人の心を優しく読む。古都は彼女に強く惹かれ、固くなって閉ざしていた心を開くようになる。また古都の兄の伸哉や、同級生の小池やまとの繊細で傷ついた心も、マナコさんは言葉少なく癒していった。
十二月のコンクールに向け、古都は放課後マナコさんのログハウスに通い、絵を描き続ける。自分の殻を破り新たな扉を開き、ようやく作品が出来上がった頃、古都はマナコさんという不思議な存在の秘密を知る。そして、雪の舞う冬の日、彼女との別れの時がやってくる。古都はマナコさんが伝えてくれた全てのことを忘れずに、これから強くしなやかに絵を描き続け、日々を重ねていこうと静かに決意する。
逃避と出会いの森 |
不思議なほど惹きつけられる人 |
底のないバケツになる |
それぞれの心の傷 |
放課後の森での時間 |
全てのハートを解き放つ |
あなたは一体何者なのですか? |
どこにも無い場所ユートピア |