20世紀初頭、北原白秋と並び称された近代詩人・三木露風の人と作品について論じる。
彼が人生の半ばに著した自伝『我が歩める道』の表題が示しているように、彼の詩人としての歩みは、道の追及にあった。この道は単に経路を意味するばかりでなく、求道という精神的遍歴の道程をも意味していた。詩壇を捨てトラピスト修道院に赴き、キリスト者としての道を選んだのも、彼にしては逃避ではなく必然の結果であった。彼にとって如何に生きるべきかという倫理的な問題意識は、生涯を通して脳裏を離れることはなかった。それはつまり誠の道を詩作の上に具現する営みとして彼を鼓舞し続けた。
晩年にはおびただしい俳句や短歌を制作しているが、白秋とは異なり結社を運営することもなく、あくまでも余技の域を超えるものではなかった。あくまでも彼は詩作を己が天命と悟り、精進を続けた稀有な詩人であった。
本書を通して以上のような露風の詩作品の背後に秘められた、ハイデッガーいうところの「詩の場所」としての世界観を少しでも解明できたとすれば、筆者のせめてもの喜びである。
はじめに |
目次 |
第1章 生い立ち |
第2章 文学の目覚め |
第3章 中学時代 |
第4章 上京 |
第5章 恋の目覚め |
第6章 試練 |
第7章 詩壇に登場 |
第8章 早稲田詩社に参加 |
第9章 帰郷 |
第10章 自然主義の影響 |
第11章 口語詩の試み |
第12章 『廃園』詩風の確立 |
第13章 三田文学に依る |
第14章 詩集『寂しき曙』の世界 |
第15章 『白き手の猟人』の背景 |
第16章 未来社の運動 |
第17章 露風の象徴論 |
第18章 修道院へ |
第19章 修道院生活 |
第20章 童謡作家としての露風 |
第21章 郊外生活 |
略年譜 |
あとがき |
参考文献 |
参考文献2 |
参考文献3 |
奥付 |
奥付 |