妖術(ようじゅつ)‐泉鏡花 現代語訳集別冊44

妖術(ようじゅつ)‐泉鏡花 現代語訳集別冊44

販売価格:77円 (税込)
状態 完成
最終更新日 2016年04月11日
ページ数 PDF:19ページ
内容紹介

【あらすじ】

むらむらと辺りを包んだ、鼠色の雲の中へ、すっきりと浮き出したように、薄化粧の艶やかな姿で、電車の中から、さッと硝子のドアを抜けて、運転手席に現れた、若い女。

電車がちょっと停まったのは、日本橋通り三丁目の赤い柱のところで。

運転手席へ、鮮やかに出たその女は、南部織の表の付いた、薄形の駒下駄に、ちらりとかかった雪のように白い足袋を見せて、紅い羽二重の着物の裾を艶やかに捌き、それが柳の如き細い腰に靡いたかと思うと、一段軽く踏み段を踏んで下りようとした。

丈を長めに着物を着付けて、銀の平打ち簪の後ろ挿し。けれども髪は、そんな生粋の芸者と見える身なりには似合わない、立派なお屋敷で好かれそうな、漆のように艶やかな高島田で、ひどくそれが目についたので、くすんだお召縮緬も、なぜか気品ある紫色を帯びているように見える。

その時、ちょうど、そこに立って、電車を待ち合わせていたのが、近くのある保険会社にちょっといい役職で勤めている、舟崎という私の知人で―それに聞いた不思議な話を、ここに記す。

目次
奥付
奥付