人魚の祠(にんぎょのほこら)‐泉鏡花 現代語訳集別冊40

人魚の祠(にんぎょのほこら)‐泉鏡花 現代語訳集別冊40

販売価格:50円 (税抜)
状態 完成
最終更新日 2016年04月09日
ページ数 PDF:14ページ
内容紹介

【あらすじ】

六月の末のある日、ちょっとした講演会で知り合いの工学士が話をするにあたり、私は誘われて出かけた。

会場へ向かう途中、曲がり角の窪地の、日陰の泥濘のところが、消え残った雪のように、散り敷いた花で真っ白であった。

いまを盛りとその花が空に咲き、木犀のような甘い匂いが、燻したように薫ってくる。

そしてその帰り、電車で赤坂の方へ帰って来た私たちの向かい側に、いつどこで乗り込んだのかは気付かなかったが、二十三四の色の白い婦人が座っていた。

女が開いた窓に対して横向きになって、どこまでも白い指でほつれ毛を掻くと、あの花の香が強く薫った。

緑の黒髮に、その花の小枝を挿していたのである。

これを見ると、工学士の手がしっかりと私の手を握り、「下りましょう。ぜひ、お話ししたいことがあります。」と言う。

そして、珈琲店の入り口近くの席で、工学士は苦学生時代、薬売りの行商をしていた時の、奇妙な体験を話し始めた。

目次
奥付
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