【あらすじ】 ある秋の日、鏡花は東海道中膝栗毛を気取り、喜多八と連れ立って、ぶらりぶらりと散策へ出かけた。 氷川のお宮を拝むことから始まり、谷中を過ぎ、根岸を歩き、土手から今戸に出て、向島に至り、浅草を経由して帰ってきただけの、小さな旅。 けれどもそこには、神の道があり、仏の教えがあり、恋があり、無常があり、景色があり、人がおり、したがってまた情があった。